鬼 滅 の 刃 bl 義勇 受け。 【鬼滅の刃】あの子の愛しい反応。【反応集】

鬼滅の刃 ネクタイ│バンコレ!

鬼 滅 の 刃 bl 義勇 受け

決して口には出さないけれど。 顔に出てしまうのは、まだまだ未熟な証だ。 誰にも気づかれないように、そっと胸の奥に。 いや、私の場合はそれ以上。 ズン……と腹の下まで沈めてしまおう。 長雨の季節が過ぎ、梅雨が明けた。 日も高く、長くなっていく。 季節は夏らしい。 その風物詩を耳に聞きながら、私は開けた障子の傍で薬瓶に綿を浸す。 鼻孔に消毒液の匂いが香る。 「冨岡さんが怪我をするなんて、珍しいですね」 眼の前に広がる肩甲骨。 いつもならその背に「滅」の文字がある隊服は脱いでいる。 細身ではあるが、しっかりと肩幅はある。 私と同じくらいの首の太さ。 その首に癖っ毛の跳ねた髪の毛が掛かっている。 目下に晒された身体は、隊服の上からは気にならなかったが、思った以上に打ち身が多かったらしい。 擦り傷に、色の変色した部分が見える。 見るからに痛そうだ。 一体どんな戦いがあったのだろう? どんな鬼だったのだろう? 「……」 返事はない。 この人は、あまり喋らない。 話すのが苦手というわけではなさそうだが、どう答えたら良いのか分からないように見える。 「ねぇ、冨岡さん」 冨岡義勇。 それが私の前にいる人の名前。 私と同じ鬼殺隊に入り、同じく柱である人物。 蟲柱の私と違い、彼は水柱。 毒を食し、内側から侵され汚れていく私と違い、全てを流す水の人。 その清流は川のような人だ。 ただ、この人の瞳は深い川底のようだけれど 「ねぇ、冨岡さん」 「……」 「聞こえないですか?冨岡さん」 「……」 「なら染みる薬を塗ってあげますね」 「……ッ!」 ワザとじくじくと痛むであろう擦り傷に、染みる薬を含んだ綿を擦り付けた。 それはそれは染みたのだろう。 冨岡さんが背を反らし、堪えるような声を漏らした。 やはり染みて痛いのだろう、反射的に腕が伸びて患部を隠そうとしている。 だが私はそれを許さない。 「冨岡さん?」 聞こえていますよね? と微笑めば、冨岡さんが少しばかり恨めしそうな声を出した。 「……胡蝶」 「はい」 首をこちらに向けた顔に、わずかに涙が浮かんでいた。 あまりの珍しいことに内心嬉々としてしまう。 同時に、その川底に自身が映ったことにも嬉々とする。 「包帯を巻いておきましょう。 化膿しては大変です」 そう言って私よりも筋肉のついた肌に手を這わせた。 しっとりとしている肌だ。 ぺたり、ぺたりと形を確かめるように触れれば、必要なところにだけついた筋肉。 呼吸と相成って、通常の人以上の力を出す身体。 その普段であれば綺麗な肌に浮いているうっ血。 冨岡さんの身体に傷をつけた鬼はこの世にもういないが、出来るなら私の毒で殺してやりたかった。 「ああ、勿体ないですね」 「綺麗な肌なのに」と小さく呟いて、その跡を隠すように包帯を巻いていく。 シュルリ……、シュルリ。 痛くないように。 傷が癒えるように。 そう願掛けでもするかのように、一巻二巻と丁寧に巻いた。 巻き終わり、今度はハサミでパチンと包帯を切り落とした。 しっかりと締めて、治療は完了。 治療といっても、この人の治癒力に頼るのが一番なのだけれど。 その背をジッと見つめる。 「冨岡さん」 その背中に思わず指を這わせ顔を近づけた。 耳を当てれば、じんわりと体温が伝わるその奥で、ドクンドクンと心臓の聞こえる音がした。 その音を聞きながら、瞳を閉じた。 ドクン、ドクン、ドクン。 動いている。 脈打っている。 生きている音。 確かな存在。 脳裏にチラついた、無き姉の姿が今も頭から離れない。 段々と冷えていく身体。 閉じていく瞳。 小さくなってくる声。 弱くなっていく心臓の音。 この背中と正反対だった。 「……」 「……」 冨岡さんは何も言わない。 だから私は付け込んでしまうんだ。 弱い私は、貴方の深い河に甘えてしまう。 身を投げて、溺れてしまいたい。 静かな川底に沈んで、何の声も聞かず姉との思い出に浸っていたい。 またミンミンと蝉の鳴き声がした。 どうやら、私の夢物語は語らせてくれないらしい。 「胡蝶」 「……こういう時、いつも黙っているのに声をかけてくれる冨岡さんが、ほんの少しだけ嫌いです」 慰める貴方が本当に優しいから。 それは言わずに私は当てていた頭を離した。 「すみません、疲れていたみたいです」 パッ! と両手を開き微笑んだ。 大丈夫です、という振りをする。 冨岡さんが傍に置いていた隊服を手に取って袖を通した。 ボタンを締めて、大事そうにしている羽織を羽織る。 どうして大切にしているのか、私は知っている。 私と同じだから。 この人も、大切な人を亡くしたと聞いた。 まぁ、この鬼殺隊に入った人それぞれ抱えている傷は、鬼によるものだ 「世話をかけた」 「いいえ。 お大事にされてください。 それと……その羽織、大切にされているんですね」 「俺も形見だからな」 そう少し寂しそうに冨岡さんが微笑んだ。 私もそうだ。 身体ばかりが大きくなり、もう男の身体になった私には羽織といえど、姉のものは少しばかり丈が足りなくなっていた。 私より高かった姉の背丈を越えてしまった。 「私もご存知と通りですよ」 あの日から切っていない髪の毛は、随分と伸びた。 私がこんなことをしたところで、姉にもなれないのに。 私は私なのに。 願掛けにしても、何も叶いはしないのに。 自嘲気に笑った。 「俺は、胡蝶の姉を忘れまいとする気持ちは否定しないし、悪いとは思わない」 まただ。 この人の、こういったところに私は弱いんだ。 この抱いているのは恋慕。 姉のような気持ではない、貴方に私は恋慕している。 先ほどのように肌に触れ、その唇と塞ぎ、組み敷いて、抱き締めて。 そんなことを思っているというのに、貴方は気づきもしないのでしょう? 「冨岡さん」 その手首を掴んだ。 治療したばかりの背を、できるだけ優しく畳に押し倒す。 サラリと私の一括りした長い髪が肩から垂れた。 「胡蝶」 冨岡さんは私の名前しか呼ばない。 拒絶もない。 全部を受け入れてくれる人。 その川底に、また私が映っていた。 酷い顔をしている。 寂しい、一人にして欲しくない。 自分のものにしたい、恋慕。 駄目じゃないか。 未熟者。 全て顔に出ているぞ。 「冨岡さん、知ってました?私、貴方のこと好きなんですよ」 あはは、と笑って言った。 色気も素っ気もない告白。 「そうか」 ほら、冨岡さんは否定も拒絶もしない。 どうせなら、気持ち悪いという眼でもしてくれたら良かったのに。 かわらずこの川底は濁ることもなく、ただ酷い顔をした私を映し続けていた。 「思いを返して貰えるとは思っていません。 貴方にはその羽織の人が一番だと知っていますから」 「否定はしない」 「それに、私は誰かと一緒に死ぬなんて出来ませんし。 一人で死にますから」 「……」 「猛毒になって、姉を殺した鬼を、出来るだけ強い鬼を私の身体で殺します」 サラリとその頬に触れた。 「でも」 「……んっ……」 「貴方を愛し続けることは許してくれますか?」 そう言って、前髪のかかる額に触れる口づけを落とした。 私の少ない生への執着。 冨岡さんの返事を聞く前に、ミンミンとまた煩く蝉の声が耳に響いた。 こいつの澄ました顔が気に入らねぇ。 ズンズンと足を鳴らし、長い廊下の先にいる半羽織の名前を呼んだ。 名を呼ばれ、振り返る男、冨岡の野郎は顔色一つ変えない。 「なんもねぇよ」 「そうか」 俺も特に用事がねぇ。 ただ目の前にいたから名前を呼んだ。 ただそれだけ。 深い紅と、変わった六角形の半羽織。 水柱の名前のように、水のように流れ掴みどころが見当たらない。 畜生、お前無事だったのかよ。 この前、任務で軽いが怪我をしたと聞いたぞ。 柱なのに情けねぇな。 本人を目の前にして言えない言葉が、だらだらと脳内に広がる。 「おい、冨岡!」 「なんだ」 また名前を呼べば、脚を止めて此方を振り向いた。 やはり顔色もかえねぇ。 大体、俺がまた名前を呼んだんだ。 お前の方からこちらに寄って来たって良いんじゃねぇか? 世間話なんてしてみても良いんじゃねぇか? 「なんだ、不死川」 「うるせぇ!」 「そうか」 そう言って、また冨岡が背を向けた。 聞いたことがある。 あの羽織は、同じ修行を積んだ兄弟弟子の形見だと。 身に纏ったところで、その知らない男は返ってこない。 それでもあの冨岡が、たまにどこか遠くを見て呟いたのを聞いたことがあった。 『お前だったら……』 馬鹿郎。 もういない奴に語り掛けたところで、返ってくる声なんて聞こえねぇよ。 そう言って、殴ってやりたかったのに呟いた冨岡の表情は、愁いを帯びていた。 その形見で、俺の知らない男に抱かれてやがるお前に、なんだか無性にいいようのない気持ちになって。 なんだよ、お前。 そんな顔も出来るのかよ 愁いを帯びた後、ほんの少し微笑んだお前を俺が抱き締めたら、お前はどんな顔をしただろう? あの時、お前を抱き締めたいと思った自身の気持ちも分からねぇ。 分かったら不味いと思った。 ただただ何かに嫉妬している。 それだけは分かった。 「冨岡」 「何だ」 三度目の正直。 また名前を呼んだ。 意味ありげに特徴的な六角形が揺れた。 イライライラ。 腹が立つ。 なんだ、この感情は。 今まで感じたこともねぇ。 「ああっ!腹が立つぜ!」 「不死川?」 キョトンとした表情が、どこか猫のように見えた。 あんなに飄々としていて、つかみどころ無い冨岡の野郎がうっかり可愛く見えてしまう。 これは一体どういうことだ? 「お前っ……!俺をどうしたんだよ!畜生!」 「?」 とんだ八つ当たりだ。 だが気持ちが収まらないのだ。 子供のようにあたり、ギャンギャンと吠える。 野良犬の方がよっぽど人懐こい。 ガシガシと頭を掻いて、もう一度眼の前の冨岡を見据えた。 やはり変わらない。 「くそっ!」 そう地団駄を踏めば、いつもと違うことが一つ。 「そうだ、不死川」 「なんだよ」 ようやく俺を見たお前。 その表情はいくばくか柔らかい。 いつもの顔と違っているだけで、どこか嬉しそうだった。 冨岡、お前笑えたんだな。 なんだ、何かを期待していいのか? 「俺は、お前と仲良くなりたいと思っているぞ」 「……ッ!」 馬鹿野郎。 そういうこと、早く言えよ。 本当、お前は馬鹿野郎だ。 しかも何だ、お前。 笑った顔、案外と可愛いじゃねぇか。 ドクンと鳴った心臓に、ああやっちまったと思った。 俺だって、お前のこと嫌いじゃねぇと思うんだよ。 馬鹿野郎。 「そうだ、不死川。 俺も同じように鬼殺隊に入り、下から順に位が上がってきた。 ここまで来るのに沢山鬼を殺してきた。 斬った。 ただただ斬った。 殺してきた。 憎かったから。 生きたかったから。 守るものがあったから。 それしか方法が無かったから。 まぁ、そんなもんどうだって良い。 鬼殺隊でも柱という地位を得た時、同じような柱の連中の顔ぶれを見た時に、こいつは本当に人間かと思う奴がいた。 それが冨岡だった。 『水柱の冨岡義勇だ』 『音柱の宇髄天元だ』 挨拶は短かった。 俺ほどとはいかないが、端正な顔をしている。 幅広な肩や、身体を上手く隠せば女として変装して任務にも向かうことが出来るくらいの顔立ち。 職業病というものだろうか。 ついつい見入ってしまった 『なんだ』 『いや、綺麗な顔してるなと』 怒るなよ、と茶化しても返って来る言葉は短く、感情の乏しい奴だった。 人形みたいな奴だな 切れ長ではあるが、縦にも大きな瞳は黒真珠のようで光を水面のように反射していた。 群青色と瑠璃色の混じったような瞳。 水柱の名の通り、水だと思った。 表情をたいして変えることもなく、淡々とした様子で話している。 此奴は呼吸をする人形かと思った。 それが始まり。 ただある日、冨岡が泣いている姿を見かけた。 肌を斬られ、骨折するような深い傷を負うことがあっても、涙を流すことの無かった冨岡が泣いていた。 あの日は雲一つない。 綺麗な月夜だった。 館で一人月見でもするかと思い立ち、部屋を出た。 長い廊下ギリシギシリと歩いていると、すでに先客がいる。 隊服ではなく同じ寝間着に着替え、その上にいつも羽織っている羽織姿が見える。 特徴的な半羽織。 そんなもの、一人しかいない。 あの人形だ。 その程度しか思っていなかったんだ。 「お、冨岡じゃねぇか。 珍しいな、月見か?」 驚かしてみようかと、気配を消して近づいた。 一歩、また一歩。 背中が大きくなり、横顔が見えた。 「……」 不覚にも見入ってしまった。 どうやって驚かそうかとか、冨岡はそもそも、驚くだろうか? そんなことを思っていたからだ。 静かな夜、照らされた涙は魅入るほどに綺麗だったんだ。 長い睫が滴を支える若葉のようで、その若葉の上を大きくなった雨粒がスルリと落ちて行く。 三粒……。 お前は人形化と思ったが、兎だったのか? 故郷の月が恋しいと泣いているのか? なんて柄にもないことを思ったりもした。 「 」 小さく呟いた声は聞こえなかった。 だが、その口の動きで分かる。 そう義勇は呟いた。 知らない名前だ。 だが無性に気になってしまう。 そして付け入る隙を探してしまう。 どうしてそんなことを考えた? 深く考える前には、隠れていた身を現していた。 「よぉ、冨岡」 「……」 此方を振り返った冨岡が、涙を拭うことをしなかった。 また一筋、涙が流れる。 「宇髄か」 「俺は月見でもしようと思ったんだがな……」 「……」 邪魔をした、と俺の前から消えようとする冨岡の腕を掴んだ。 細い手首。 これでよく刀を振り続けていられるものだ。 「冨岡」 「なんだ」 「お前のその涙、俺が止めてやろうか?」 そう言って、顔を近づけた。 頬から顎に向け、涙の跡が残っていた。 そのまま薄く開いた唇に、自身の唇を重ねた。 「……んっ……ぁ」 触れるだけの口づけを終え、冨岡の顔を見つめた。 やはり睫毛が長い。 黒々とした睫毛が震えていた。 「冨岡、眼を瞑って錆兎のことだけ考えていろ」 なんて酷くて狡い手を使うようになったんだろうな、俺は。 その身体には少しずつ、俺の跡だけが増えていくんだ。

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【鬼滅の刃】あの子の愛しい反応。【反応集】

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決して口には出さないけれど。 顔に出てしまうのは、まだまだ未熟な証だ。 誰にも気づかれないように、そっと胸の奥に。 いや、私の場合はそれ以上。 ズン……と腹の下まで沈めてしまおう。 長雨の季節が過ぎ、梅雨が明けた。 日も高く、長くなっていく。 季節は夏らしい。 その風物詩を耳に聞きながら、私は開けた障子の傍で薬瓶に綿を浸す。 鼻孔に消毒液の匂いが香る。 「冨岡さんが怪我をするなんて、珍しいですね」 眼の前に広がる肩甲骨。 いつもならその背に「滅」の文字がある隊服は脱いでいる。 細身ではあるが、しっかりと肩幅はある。 私と同じくらいの首の太さ。 その首に癖っ毛の跳ねた髪の毛が掛かっている。 目下に晒された身体は、隊服の上からは気にならなかったが、思った以上に打ち身が多かったらしい。 擦り傷に、色の変色した部分が見える。 見るからに痛そうだ。 一体どんな戦いがあったのだろう? どんな鬼だったのだろう? 「……」 返事はない。 この人は、あまり喋らない。 話すのが苦手というわけではなさそうだが、どう答えたら良いのか分からないように見える。 「ねぇ、冨岡さん」 冨岡義勇。 それが私の前にいる人の名前。 私と同じ鬼殺隊に入り、同じく柱である人物。 蟲柱の私と違い、彼は水柱。 毒を食し、内側から侵され汚れていく私と違い、全てを流す水の人。 その清流は川のような人だ。 ただ、この人の瞳は深い川底のようだけれど 「ねぇ、冨岡さん」 「……」 「聞こえないですか?冨岡さん」 「……」 「なら染みる薬を塗ってあげますね」 「……ッ!」 ワザとじくじくと痛むであろう擦り傷に、染みる薬を含んだ綿を擦り付けた。 それはそれは染みたのだろう。 冨岡さんが背を反らし、堪えるような声を漏らした。 やはり染みて痛いのだろう、反射的に腕が伸びて患部を隠そうとしている。 だが私はそれを許さない。 「冨岡さん?」 聞こえていますよね? と微笑めば、冨岡さんが少しばかり恨めしそうな声を出した。 「……胡蝶」 「はい」 首をこちらに向けた顔に、わずかに涙が浮かんでいた。 あまりの珍しいことに内心嬉々としてしまう。 同時に、その川底に自身が映ったことにも嬉々とする。 「包帯を巻いておきましょう。 化膿しては大変です」 そう言って私よりも筋肉のついた肌に手を這わせた。 しっとりとしている肌だ。 ぺたり、ぺたりと形を確かめるように触れれば、必要なところにだけついた筋肉。 呼吸と相成って、通常の人以上の力を出す身体。 その普段であれば綺麗な肌に浮いているうっ血。 冨岡さんの身体に傷をつけた鬼はこの世にもういないが、出来るなら私の毒で殺してやりたかった。 「ああ、勿体ないですね」 「綺麗な肌なのに」と小さく呟いて、その跡を隠すように包帯を巻いていく。 シュルリ……、シュルリ。 痛くないように。 傷が癒えるように。 そう願掛けでもするかのように、一巻二巻と丁寧に巻いた。 巻き終わり、今度はハサミでパチンと包帯を切り落とした。 しっかりと締めて、治療は完了。 治療といっても、この人の治癒力に頼るのが一番なのだけれど。 その背をジッと見つめる。 「冨岡さん」 その背中に思わず指を這わせ顔を近づけた。 耳を当てれば、じんわりと体温が伝わるその奥で、ドクンドクンと心臓の聞こえる音がした。 その音を聞きながら、瞳を閉じた。 ドクン、ドクン、ドクン。 動いている。 脈打っている。 生きている音。 確かな存在。 脳裏にチラついた、無き姉の姿が今も頭から離れない。 段々と冷えていく身体。 閉じていく瞳。 小さくなってくる声。 弱くなっていく心臓の音。 この背中と正反対だった。 「……」 「……」 冨岡さんは何も言わない。 だから私は付け込んでしまうんだ。 弱い私は、貴方の深い河に甘えてしまう。 身を投げて、溺れてしまいたい。 静かな川底に沈んで、何の声も聞かず姉との思い出に浸っていたい。 またミンミンと蝉の鳴き声がした。 どうやら、私の夢物語は語らせてくれないらしい。 「胡蝶」 「……こういう時、いつも黙っているのに声をかけてくれる冨岡さんが、ほんの少しだけ嫌いです」 慰める貴方が本当に優しいから。 それは言わずに私は当てていた頭を離した。 「すみません、疲れていたみたいです」 パッ! と両手を開き微笑んだ。 大丈夫です、という振りをする。 冨岡さんが傍に置いていた隊服を手に取って袖を通した。 ボタンを締めて、大事そうにしている羽織を羽織る。 どうして大切にしているのか、私は知っている。 私と同じだから。 この人も、大切な人を亡くしたと聞いた。 まぁ、この鬼殺隊に入った人それぞれ抱えている傷は、鬼によるものだ 「世話をかけた」 「いいえ。 お大事にされてください。 それと……その羽織、大切にされているんですね」 「俺も形見だからな」 そう少し寂しそうに冨岡さんが微笑んだ。 私もそうだ。 身体ばかりが大きくなり、もう男の身体になった私には羽織といえど、姉のものは少しばかり丈が足りなくなっていた。 私より高かった姉の背丈を越えてしまった。 「私もご存知と通りですよ」 あの日から切っていない髪の毛は、随分と伸びた。 私がこんなことをしたところで、姉にもなれないのに。 私は私なのに。 願掛けにしても、何も叶いはしないのに。 自嘲気に笑った。 「俺は、胡蝶の姉を忘れまいとする気持ちは否定しないし、悪いとは思わない」 まただ。 この人の、こういったところに私は弱いんだ。 この抱いているのは恋慕。 姉のような気持ではない、貴方に私は恋慕している。 先ほどのように肌に触れ、その唇と塞ぎ、組み敷いて、抱き締めて。 そんなことを思っているというのに、貴方は気づきもしないのでしょう? 「冨岡さん」 その手首を掴んだ。 治療したばかりの背を、できるだけ優しく畳に押し倒す。 サラリと私の一括りした長い髪が肩から垂れた。 「胡蝶」 冨岡さんは私の名前しか呼ばない。 拒絶もない。 全部を受け入れてくれる人。 その川底に、また私が映っていた。 酷い顔をしている。 寂しい、一人にして欲しくない。 自分のものにしたい、恋慕。 駄目じゃないか。 未熟者。 全て顔に出ているぞ。 「冨岡さん、知ってました?私、貴方のこと好きなんですよ」 あはは、と笑って言った。 色気も素っ気もない告白。 「そうか」 ほら、冨岡さんは否定も拒絶もしない。 どうせなら、気持ち悪いという眼でもしてくれたら良かったのに。 かわらずこの川底は濁ることもなく、ただ酷い顔をした私を映し続けていた。 「思いを返して貰えるとは思っていません。 貴方にはその羽織の人が一番だと知っていますから」 「否定はしない」 「それに、私は誰かと一緒に死ぬなんて出来ませんし。 一人で死にますから」 「……」 「猛毒になって、姉を殺した鬼を、出来るだけ強い鬼を私の身体で殺します」 サラリとその頬に触れた。 「でも」 「……んっ……」 「貴方を愛し続けることは許してくれますか?」 そう言って、前髪のかかる額に触れる口づけを落とした。 私の少ない生への執着。 冨岡さんの返事を聞く前に、ミンミンとまた煩く蝉の声が耳に響いた。 こいつの澄ました顔が気に入らねぇ。 ズンズンと足を鳴らし、長い廊下の先にいる半羽織の名前を呼んだ。 名を呼ばれ、振り返る男、冨岡の野郎は顔色一つ変えない。 「なんもねぇよ」 「そうか」 俺も特に用事がねぇ。 ただ目の前にいたから名前を呼んだ。 ただそれだけ。 深い紅と、変わった六角形の半羽織。 水柱の名前のように、水のように流れ掴みどころが見当たらない。 畜生、お前無事だったのかよ。 この前、任務で軽いが怪我をしたと聞いたぞ。 柱なのに情けねぇな。 本人を目の前にして言えない言葉が、だらだらと脳内に広がる。 「おい、冨岡!」 「なんだ」 また名前を呼べば、脚を止めて此方を振り向いた。 やはり顔色もかえねぇ。 大体、俺がまた名前を呼んだんだ。 お前の方からこちらに寄って来たって良いんじゃねぇか? 世間話なんてしてみても良いんじゃねぇか? 「なんだ、不死川」 「うるせぇ!」 「そうか」 そう言って、また冨岡が背を向けた。 聞いたことがある。 あの羽織は、同じ修行を積んだ兄弟弟子の形見だと。 身に纏ったところで、その知らない男は返ってこない。 それでもあの冨岡が、たまにどこか遠くを見て呟いたのを聞いたことがあった。 『お前だったら……』 馬鹿郎。 もういない奴に語り掛けたところで、返ってくる声なんて聞こえねぇよ。 そう言って、殴ってやりたかったのに呟いた冨岡の表情は、愁いを帯びていた。 その形見で、俺の知らない男に抱かれてやがるお前に、なんだか無性にいいようのない気持ちになって。 なんだよ、お前。 そんな顔も出来るのかよ 愁いを帯びた後、ほんの少し微笑んだお前を俺が抱き締めたら、お前はどんな顔をしただろう? あの時、お前を抱き締めたいと思った自身の気持ちも分からねぇ。 分かったら不味いと思った。 ただただ何かに嫉妬している。 それだけは分かった。 「冨岡」 「何だ」 三度目の正直。 また名前を呼んだ。 意味ありげに特徴的な六角形が揺れた。 イライライラ。 腹が立つ。 なんだ、この感情は。 今まで感じたこともねぇ。 「ああっ!腹が立つぜ!」 「不死川?」 キョトンとした表情が、どこか猫のように見えた。 あんなに飄々としていて、つかみどころ無い冨岡の野郎がうっかり可愛く見えてしまう。 これは一体どういうことだ? 「お前っ……!俺をどうしたんだよ!畜生!」 「?」 とんだ八つ当たりだ。 だが気持ちが収まらないのだ。 子供のようにあたり、ギャンギャンと吠える。 野良犬の方がよっぽど人懐こい。 ガシガシと頭を掻いて、もう一度眼の前の冨岡を見据えた。 やはり変わらない。 「くそっ!」 そう地団駄を踏めば、いつもと違うことが一つ。 「そうだ、不死川」 「なんだよ」 ようやく俺を見たお前。 その表情はいくばくか柔らかい。 いつもの顔と違っているだけで、どこか嬉しそうだった。 冨岡、お前笑えたんだな。 なんだ、何かを期待していいのか? 「俺は、お前と仲良くなりたいと思っているぞ」 「……ッ!」 馬鹿野郎。 そういうこと、早く言えよ。 本当、お前は馬鹿野郎だ。 しかも何だ、お前。 笑った顔、案外と可愛いじゃねぇか。 ドクンと鳴った心臓に、ああやっちまったと思った。 俺だって、お前のこと嫌いじゃねぇと思うんだよ。 馬鹿野郎。 「そうだ、不死川。 俺も同じように鬼殺隊に入り、下から順に位が上がってきた。 ここまで来るのに沢山鬼を殺してきた。 斬った。 ただただ斬った。 殺してきた。 憎かったから。 生きたかったから。 守るものがあったから。 それしか方法が無かったから。 まぁ、そんなもんどうだって良い。 鬼殺隊でも柱という地位を得た時、同じような柱の連中の顔ぶれを見た時に、こいつは本当に人間かと思う奴がいた。 それが冨岡だった。 『水柱の冨岡義勇だ』 『音柱の宇髄天元だ』 挨拶は短かった。 俺ほどとはいかないが、端正な顔をしている。 幅広な肩や、身体を上手く隠せば女として変装して任務にも向かうことが出来るくらいの顔立ち。 職業病というものだろうか。 ついつい見入ってしまった 『なんだ』 『いや、綺麗な顔してるなと』 怒るなよ、と茶化しても返って来る言葉は短く、感情の乏しい奴だった。 人形みたいな奴だな 切れ長ではあるが、縦にも大きな瞳は黒真珠のようで光を水面のように反射していた。 群青色と瑠璃色の混じったような瞳。 水柱の名の通り、水だと思った。 表情をたいして変えることもなく、淡々とした様子で話している。 此奴は呼吸をする人形かと思った。 それが始まり。 ただある日、冨岡が泣いている姿を見かけた。 肌を斬られ、骨折するような深い傷を負うことがあっても、涙を流すことの無かった冨岡が泣いていた。 あの日は雲一つない。 綺麗な月夜だった。 館で一人月見でもするかと思い立ち、部屋を出た。 長い廊下ギリシギシリと歩いていると、すでに先客がいる。 隊服ではなく同じ寝間着に着替え、その上にいつも羽織っている羽織姿が見える。 特徴的な半羽織。 そんなもの、一人しかいない。 あの人形だ。 その程度しか思っていなかったんだ。 「お、冨岡じゃねぇか。 珍しいな、月見か?」 驚かしてみようかと、気配を消して近づいた。 一歩、また一歩。 背中が大きくなり、横顔が見えた。 「……」 不覚にも見入ってしまった。 どうやって驚かそうかとか、冨岡はそもそも、驚くだろうか? そんなことを思っていたからだ。 静かな夜、照らされた涙は魅入るほどに綺麗だったんだ。 長い睫が滴を支える若葉のようで、その若葉の上を大きくなった雨粒がスルリと落ちて行く。 三粒……。 お前は人形化と思ったが、兎だったのか? 故郷の月が恋しいと泣いているのか? なんて柄にもないことを思ったりもした。 「 」 小さく呟いた声は聞こえなかった。 だが、その口の動きで分かる。 そう義勇は呟いた。 知らない名前だ。 だが無性に気になってしまう。 そして付け入る隙を探してしまう。 どうしてそんなことを考えた? 深く考える前には、隠れていた身を現していた。 「よぉ、冨岡」 「……」 此方を振り返った冨岡が、涙を拭うことをしなかった。 また一筋、涙が流れる。 「宇髄か」 「俺は月見でもしようと思ったんだがな……」 「……」 邪魔をした、と俺の前から消えようとする冨岡の腕を掴んだ。 細い手首。 これでよく刀を振り続けていられるものだ。 「冨岡」 「なんだ」 「お前のその涙、俺が止めてやろうか?」 そう言って、顔を近づけた。 頬から顎に向け、涙の跡が残っていた。 そのまま薄く開いた唇に、自身の唇を重ねた。 「……んっ……ぁ」 触れるだけの口づけを終え、冨岡の顔を見つめた。 やはり睫毛が長い。 黒々とした睫毛が震えていた。 「冨岡、眼を瞑って錆兎のことだけ考えていろ」 なんて酷くて狡い手を使うようになったんだろうな、俺は。 その身体には少しずつ、俺の跡だけが増えていくんだ。

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#腐滅の刃 #しのぎゆ 【鬼滅】義勇さん受け・小話詰め合わせ【しのぎゆ・さねぎゆ・宇義】

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【鬼滅の刃】義勇と錆兎の関係とは? 鬼滅の刃めっちゃ面白い 久々にアニメ見た とりまカッコイイ。 そんな錆兎と義勇さんの関係は何なのでしょうか? 2人とも最初のころ炭治郎を積極的に助けたりと何らかの関係がありそうですよね。 ということで、ここでは 錆兎と義勇さんの関係についてまとめていきます。 最終選別を一緒にうけていた! 今気付いたんだけど錆兎、義勇さんと同じ着物の柄なんだね 同期複線がちゃんとあった — コーヤ@低浮上 ko0oya 実は、 義勇さんと錆兎は同い年(13歳)で鱗滝門下生でした。 つまり 同期ですね。 更に、 藤の山の最終選別も一緒に受けていたそう! 2人にこんな関係があったとは驚きですね。 また、 錆兎は当時、義勇さんより強かったそう…。 生きていたらものすごい剣士になっていたかもしれませんね。 同じ門下生、同じ境遇(天涯孤独)、同い年ということもありすぐに仲良くなったそう。 義勇さんによると 錆兎は正義感が強く、優しい少年だった らしいです。 こんな錆兎の人柄だからこそ義勇さんと仲良くなれたんでしょうね。 更に、義勇さんが 「蔦子姉さんの代わりに死ねばよかった」 といった時に、錆兎は画像のように びんたしながら義勇を叱咤したんです。 この発言や行動は、親友や兄弟でないとなかなかできないですよね。 正に2人は兄弟みたいな仲だったんでしょう! 二人の関係はこんな感じでした。 最終選別を一緒に受けていたとは驚きですよね。 すごい仲良しでしたし…。 もしかして、錆兎が亡くならなければ義勇さんコミュ障じゃなかったかったのでは? 【鬼滅の刃】義勇と錆兎の過去!切なすぎる… 今さらですが、最終選別で錆兎が負傷した義勇さんをあずけた相手って村田さんだったのね。 村田さんと義勇さん同期だしね。 あーこの二人が話してるシーンとか見たいな~。 — ミズナギ omochikoume 最終選別で錆兎が 選別で亡くなったことは大分前から分かっていました。 門下生が一人亡くなっちゃって可哀想ぐらいに思っていたのですが… 義勇さん目線で見るととても悲しい出来事だったんです! ということで、ここでは義勇さんと錆兎の共通の過去である最終選別について紹介します。 ケガをした義勇さん 最終選別で義勇さんは最初に襲い掛かかってきた鬼にケガを負わされて 意識もうろうとしていました。 そんな時、 錆兎が義勇さんを助けに来てくれたんです! 義勇さん預けられる 錆兎は義勇さんを別の少年に預けました。 なんとここで驚きの事実が分かるんです。 その 義勇さんを預けた相手は村田さんだったんですよ! 色々伏線あって面白いですよね。 (笑) まあ、そんなこんなで、錆兎は助けを呼んでいる別の少年の元に向かいます。 あの鬼との出会い 、4話視聴 鱗滝さんの弟子キラーの鬼と最終選別の山で遭遇。 47年で50人喰ったってことは一年に一人ペースか。 …意外と少ない?まあ、いきなり激強設定の鬼出したら漫画的に後が詰まるからね。 …炭治郎、必殺技めっちゃ習得していた汗。 …やっぱり敵役の子安さんボイスはほんと嵌りますね。 — やまと yamato1130 錆兎は色々な少年を助け、 ほとんどの鬼を一人で倒してしまいました。 ですが 、あの鬼と出会ってしまうんです! そう、あの「鱗滝さんの弟子喰いまくり野郎」ですよ。 この鬼は江戸時代慶応のころに鱗滝さんにとらえられ藤の山に入れられました。 そのことを恨んでか、 鱗滝さんの弟子を食べるようになったんです。 そんな執念とたくさん人を食べていることもあってか、 選別の鬼の中では規格外に強いんですよ。 さすがに錆兎もこの鬼にはかなわず食べらてしまいました。 義勇さん目覚める 義勇さんは目覚めると布団の上にいました。 多分お屋敷でしょうね。 そして、 村田さんなど仲間に聞くと最終選別はすでに終わっていたそう。 多分 その時に錆兎が亡くなったことも聞いたのでしょう。 どんなに悲しかっただろうか…。 一応 義勇さんは七日間生き延びたので選別には受かりました。 ですが、錆兎を亡くしたこととその時助けられなかったことで胸に大きな穴が開いてしまったのです。 義勇さんと錆兎の最終選別はこんな感じでした。 大切な仲間をなくすのはとっても辛いことですよね。 しかもその場にいられず助けられなかったことや 活躍せずに鬼殺隊に入ってしまったことで メンタルずたぼろになったんでしょうね義勇さん。 柱達に妙な壁を作ったり無口なのはお姉さんの死亡や最終選別での出来事のせいなのかもしれませんね。 こりゃコミュ障にもなる…。 【鬼滅の刃】義勇と錆兎の過去は何巻何話? 【コミックス最新刊発売まであと1週間!! 新学年・新年度の始まりのお供にぜひどうぞ!! 今では見たことのない笑顔の義勇さん、ちょっと弱そうな義勇さん。 義勇さん推しにはたまらないのではないでしょうか? そういう面でも必見ですね! ということで皆さん見てみてください。

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